まるでナゲット

この昨今のコンビニ業界でものすごい新星が現れた。コンビニクオリティといえば辛々粉やトムヤムクンラーメン、セブンのつけ麺。ローソンの黄金チキン。したらば。やみつきホルモンやそのまんまコロッケとものすごく美味しいものが溢れている中、恐ろしいことに他と違う方法論の究極を行っている。

バカリズムがラジオで芸人として売れるなら自分の方法論を見つけなきゃダメだ。誰もやってないようなことをやらなければいけない。とか、会田誠が自分の方法を見つけなきゃいけないとか、岡本太郎が自分の衝動に突き動かされろうんぬんのような事を言っている中、それを体現しようという食べ物が全国で流通されたのだ。味の好みなのかもしれないが、このまるでナゲットの個性としては、だ、ものスゲぇまずい。前衛アートを食で表現しているのかもしれない、ひょっとすると。「俺はこのうまさわかるけどね」とドヤ顔で大学生が言うのかもしれない。ジントニック語り始めの。

 

丸投げというダブルミーニングも感じる。

食べた感想をまだ申し上げてなかった。食べた瞬間は「ん?ナゲット」噛み続けると、「苦い。歯くそ?」さらに噛み続けると「あぁ歯くそを丸めたものを今、俺は食べているんだな。歯くそってまるでナゲットな味するな」と思い込むようになっていく。そして、だんだんとイライラしたのち、袋を見ると、歯くそがごっそり詰まっている。どうしたものか。と思案に暮れつつ、もう一個口に含む「あれ、以外とナゲットぽい?」「いや、歯くそだね」「うん歯くそだ」と確認作業に入る。これ、まだ食べなきゃいけないの?どうしよう。こうしている間にもアフリカの子供たちは貧困の果て、飢えを凌いでいるのだ。これが例え歯くそだとしても、食べらるのだ。ツイッターでふと検索すると、予測変換で「まるでナゲット まずい」とか出てきた。当たり前といえばあたり前の結果ではある。JPOPの歌詞で「僕が歯くそを食べるなら、君はまるでナゲットと言うと思った」とか言ってたような気がする。

甲子園球児が泣きながら土を拾った帰り、コンビニでまるでナゲットを口にする。「いつもよりこの歯くそしょっぺぇや。はは」なんてことになる。

失恋した帰り道、「ああ、これ歯くそだ。そういえばあいつの口臭に似ていたな」とか思い出に浸ったりするだろう。

 

逆にみんな食べてみたほうがいいと思います。心が揺さぶられることの少ない昨今。こんなにも心が震える「ああ、本当の肉がいつか食いてぇなぁ」と思うから。

ひょっとしたら裏には陸王のようなドラマがあったのかもしれない。

役所広司「これでまるでナゲットが作れます」

陸王見たことないから、ボケられず。おしまい。